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ここからは空がよく見える。


少女がゆっくりと言った。
「空を見て、泣いちゃったことがあるの」
「空を?」
鸚鵡返しに繰り返し、少年は目をしばたいた。
不思議なことを言う、と思う。
彼女はそっと目を伏せ、続けた。
「きっと、空があんまりキレイだったから」
気が付いたら泣いてたの。


見上げる瞳のふちがふいに温かくなった気がしたが、
少年は無視を決め込んだ。
今はただ、この空を見ていようと思う。
それはとても青く、そして遠い。



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